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下書きより

だれか一人の人生を
闇夜に引き摺り込むことが
こんなにも快感なのだと
信じて疑わなかった
未熟な少女の私

私のふたつの目からは
酸性雨しか流れなかったから
吐き出して、吐き出すたびに
頬と喉、ぼろぼろに溶けていった

錆びついた私の手のひら
崩れた愛が零れ落ちる


彼はいつだって神様だったから
僕に感情を見せない
何事も無かったかのように
ただ微笑んでいるだけだった

気に喰わない

怒鳴らせたかったの
一度だけ素を見せてくれたね
飛び降りようと、扉に手をかけたら
怒りと焦燥に満ちた瞳を
ガラスの反射に見た

やめろと声を荒げて
初めて名前を呼んでくれた瞬間だったよ
それが最後だったけれど

ロマンティックに憧れて
死ぬ理由をすべて捧げた
17歳の春

あの時渡せなかった手紙
「私のことは早く忘れてください」
「そしたら気兼ねなく死ねるから」

今でも彼は、私のこと
忘れないでいてくれているだろうか