fic.
寝ぼけまなこの君に
コーヒーを淹れてあげたい、とか
ケチャップの焦げるにおい
抱きしめたい気持ちをこらえる
崩れていないほうの目玉焼きをあげる
君と初めて開けた赤ワインのコルク
まだ大事に持っている
日曜日はお出かけしよう
お互いに香水をかけあって
玄関の前で抱きあう
ふたつの香りが交ざりあうとき
桜が咲いたみたい
ひかりがこぼれた。
君の横顔をずっと追いかけていたい
新緑が似合うその眼差し
雪の中で火照った頬にも
いつだってくちづけを送ろう
そんな幸せ
日常でささやかに息をひそめた幸せ
いつだって暗闇に藻掻いたわたしの
うなじをそっと撫でてくれた
掬い上げるきみのぬくもり
火をつけることは
全てを終わらせることだと疑わなかった、
燃えさかる業火しか見たことがないわたしに
ほら、これが光なのだよと
キャンドルを灯してくれた
ゆらめく火のあたたかさ
教えてくれてありがとう
ともに息をして