うさぎ
恋に落ちる音って、どんなのだとおもう。
からん、とか、きらきら、とか、ごつん、とか。人に依って、時に依って、違うのかもしれない。
わたし、苺ミルクを片手に、ひどく甘ったるいその液体、飲んだり飲まなかったりして、きみの周りをぴょんぴょん跳ねていた。卯年の、正月。
ピンクいろのそれを、すこしこぼしながら、きみを横切ったとき、「かわいい」ってつぶやくのが聞こえて、その瞬間、ふわふわの頭がぐらりと揺れた。
たぶん、あれは、わたしの頭の中、うすく白濁した泉があるのだけれど、こぼした苺ミルクが混ざったのだと思う。ほんの一滴が、わたしの泉を全部ピンクいろに染めてしまった。
聞こえたんだよ。恋に落ちる音?へんな薬を飲んだみたいだった。ぐわん、て音がして、意識がぼんやりした。何にも聞こえなくなって、寒さもわかんなくなって、ただ、ぴょんぴょんと跳ねることしかできない。
耳ふさいだ、あわれなうさぎ。