C15H10Cl2N2O2
あの日から変わらない薬を飲んで、
あの時と同じ曲を聴いた。
さっきからうるさい、窓閉めて。
頭に残る君の声。
心地良くて、また眠たくなる。
鮮明に思い出せるんだ
爪先は凍えていて、京都駅の地下街を
金木犀に包まれながら、ふらふら歩いた。
視界はぼんやりとして、もやがかかったみたい。
幸せだった
どうしようもなく、幸せだった
ひとりぼっちだったから
ひとりぼっちは、
何かに溺れてしまう末路らしい
異性。ギャンブル。アルコール。
安定剤は、いちばん手軽な幸せだった
勝手に脳を弄ってくれるから
目の前の不安なんて全部なかったことにして
雲の上まで連れて行ってあげるよ
だらんとした気怠さのなかで
わたしのためだけに耳元で奏でてくれる。
幻想の中を歩く。
きっと天国には、金木犀が咲き乱れている。